ゲーム音楽を演奏するアマチュアのオーケストラの二大巨頭の一つである「リトルジャックオーケストラ」。今年もGAME MUSIC GARDENのhideさんにお誘いいただいて8月18日に開催された定期演奏会に行ってきましたよ! 今年はFF9の39曲をオーケストラで演奏するという無茶な企画。 FF9への想いが強すぎて、観客はもちろん演奏者も涙してしまう最高のコンサートでした!!FF9大好きだー!!>>続き
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やってきました横浜みなとみらい!
2000人収容のみなとみらいホール!
アマチュア楽団とは思えない巨大なコンサートホールです。さすがリトルジャックさんです。規模がハンパないです。
指定席なのに、開場前からこの行列!
ホールの前にあるカフェ・ド・クリエの前には、ニンテンドー3DSを持ってたくさんの人がすれ違いをしていましたw。
なぜみんなこんなに早くから集まるかというと、開演前にロビーでミニコンサートがあるからなのです。
ロビーコンサートの曲目は次のとおり。
ブレイブリー・デフォルトより
・永遠の刹那 (タイトルの曲)
・光と影の地平 (フィールドの曲)
・艶花の国 (フロウエルの曲)
・戦いの鐘 (バトルの曲)
・勝利の歓び (バトル勝利の曲)
ゲームの面白さもさることながら、「進撃の巨人」のLinked Horizonが手掛けた音楽も大好評だったブレイブリー・デフォルトから、スタンダードな5曲を弦楽器のみで演奏!フロウエルの曲いいよフロウエル。1stバイオリンの演奏者は右目に花を咲かせてて、完全に前見えないだろwwと思ったのですが、どう見てもウタウタイですありがとうございました。勝利の歓びを演奏したときにクルっと奏者が回転したのが面白かったですw
クロノ・トリガーより
・魔王決戦
聖剣伝説 〜ファイナルファンタジー外伝〜より
・最後の決戦
ファイナルファンタジー6より
・決戦
ロマンシング サ・ガより
・決戦!サルーイン
なにこの決戦しまくりな選曲(いや戦曲)は!前座の前座であるロビーコンサートでこの燃えっぷりはあり得ないですw。アンサンブルとしては少し多めの弦楽団で、大迫力でした!みんなが大好きな曲ばかりでサービスしまくりですね!
ロビーコンサートが終わると、興奮冷めやらぬうちにホールの中へ。
ホール内は撮影禁止だったので、公式サイトの写真を引用すると、ホールはこんなかんじです。
演奏曲は次のとおりです。
【第1部】
植松伸夫作曲:『ファイナルファンタジー6』より
蘇る緑【第2部】
植松伸夫作曲:『ファイナルファンタジー9』より
いつか帰るところ
嵐に消された記憶 ~ アレクサンドリアの空
この刃に懸けて ~ バトル1~プリマビスタ墜落
あの丘を越えて
辺境の村ダリ ~ 黒のワルツ ~ 限りある時間(とき)
黒魔道士vs黒魔道士 ~ バトル2 ~ 南ゲート突破
ハンターチャンス
眠らない街トレノ ~ 背徳の旋律
ローズ・オブ・メイ ~ バハムート来襲 ~ 守るべきもの
とどかぬ想い ~ 髪を切るダガー ~ 飛空艇ヒルダガルデ【第3部】 植松伸夫作曲:『ファイナルファンタジー9』より
(Special Guest:白鳥英美子)
イプセンの古城
テラ~時を刻む城パンデモニウム~独りじゃない
消えぬ悲しみ~銀竜戦
クリスタルワールド ~ 破滅への使者 ~ 最後の闘い
奪われた瞳 ~ ジタン、ダガー別れ ~ クジャの元へ
記憶の歌 ~ 盗めぬ二人のこころ ~ その扉の向こうに
Melodies Of Life ~ Final Fantasy
今年もツッコミどころ満載のプログラムです!!なに考えてんだwプロでもこんなのやらないよw(褒め言葉)
■FF6 蘇る緑
1曲目となるFF6の「蘇る緑」は1曲で21分を超えるFFシリーズ最長の曲!演奏時間=FF6のエンディング時間。FF6の主人公14人のそれぞれのテーマ曲がメドレーになっていて、FF6のすべてをおさらいできる名曲です。「エドガー&マッシュ」のテーマや、セリスのテーマからロックのテーマへ展開するところは勇壮で聴きごたえがありました!いちいち名シーンが浮かんできます。お前の口癖だったな!ダリルよ! すべてが終わった後最後に流れる「ファイナルファンタジー」で大満足、おなか一杯になりました。まだ一曲目なのに・・・!
■いつか帰るところ
FF9は現代のオーケストラが生まれる前の音楽である「古楽」をテーマにした楽曲構成になっていますが、それを象徴するのがこのタイトルバックのBGMです。素朴にリコーダーのみで演奏されるこの曲を、原曲そのままに再現。ホールの中は「これからFF9がはじまる…!」という空気に満たされていきます。
■この刃に懸けて ~ バトル1~プリマビスタ墜落
ゲーム中にたった一度しか流れないけど、かっこいいから大人気の「この刃に懸けて」がオーケストラで聴けるなんて!重低音が少ないリズミカルで軽やかな曲調、トライアングルがいいかんじに効いてました!そしてメドレーで、FF6以来バトル1に復活した「デデデデデデデー」のたぎるビートが流れてきてバトル1が開戦です。原曲は電子楽器がふんだんに使われていますが、違和感なくオーケストレーションされていました。いつもながら原曲重視のリトルジャックさんの編曲は聞いてて気持ちがいいです。
■独りじゃない
パンデモニウムで一人で戦闘していると、仲間が次々に助けに来てくれるシーンで流れる曲。FF9屈指の人気曲であり、仲間たちの優しさや友情を感じるとにかくアツい曲です。メロディはチェンバロが担当。チェンバロは音の強弱をつけるのが苦手な楽器なので感情をこめるのが難しいところ。しかし、指揮者の志村さんが演奏中にこぶしを作って、自分の胸のところでグッっと握りしめた仕草をしてて、それに応えるかのような魂のこもったアツい演奏でした!
■最後の闘い
バトル開幕時、原曲では気持ち悪いたくさんのあえぎ声が聞こえてきていますが、それを見事に再現!合唱団のコール・クリスタル・マナさんのみなさんが、めちゃくちゃ気持ち悪く喘ぎ声を出しまくってくれていました。いろんなコンサートの引っ張りだこなCCMさんですが、だんだん芸風(芸風?)が広がっていますw 実におどろおどろしく、狂気にあふれたイントロが終わって、エレキギターが激しく鳴るロックの曲調になると、ストリングスのみなさんの動きが激しく大きくなり、例によってマリンバはスゴイし、手に汗握るバトルが展開されました!
■奪われた瞳 ~ ジタン、ダガー別れ ~ クジャの元へ
記憶の歌 ~ 盗めぬ二人のこころ ~ その扉の向こうに Melodies Of Life ~ Final Fantasy
これらの楽曲群は、いわゆる「ラストバトル」から「エンディング」のスタッフロール終了までに流れる曲です。一連の流れがそのままコンサートでも再現されていました。その選曲、演出、演奏が本当に素晴らしかった。FF9はラスボスも倒した後もストーリーが大きく展開していき、「最後までどうなるのかわからない」趣向となっていますが、それを追体験する意図になっていたんです。13年前の夏、2000年の7月16日にFF9を初めてクリアしたんですが、その時の感動がよみがえってきましたよ!
通常のコンサートであれば、ソリストとして登場する白鳥さんは「白鳥英美子さんです!」などと盛大な拍手で迎えられるはずですが、今日はそうではなありません。「クジャの元へ」が演奏されている最中に、静かに、静かに入ってきました。
そして、エンディングはビビのモノローグへとうつっていきます。そこで流れる「記憶の歌」はMelodies Of Lifeのメロディを「ラララ」で歌う曲。今回のコンサートでは白鳥さんが、優しく、みんなを包み込むように歌いはじめました。
「ビビだって!?」
「気安くその名前を呼ぶなっ!!」
アレクサンドリアのあのシーンが目に浮かぶようです。オーケストラの方々も、同じだったんでしょう。白鳥さんの歌声に目がうるんでいる方がたくさんいました。僕も、このあたりで目に涙が貯まってよく前が見えませんでした。
そして、「盗めぬ二人のこころ」「その扉の向こうに」の演奏が終わった後。ゲーム画面では黒いバックに白い文字が出てきます。その言葉を白鳥さんが読み上げました。語りかけるように。
ねぇ どうして助かったの…?
助かったんじゃないさ 生きようとしたんだ
いつか帰るところに帰るために
だから うたったんだ
「あのうたを」
タン、タン、タン♪
タララーラララン♪
読み終わるとともに、Melodies Of Lifeのイントロがピアノから奏でられます。この演出凄すぎる…!!!やりすぎです!!!涙腺決壊しましたよもう!!完全にエンディングです!!スクリーンなんてどこにも無いのに、観客の心の中にはまったく同じ情景が映し出されていたに違いありません。おのれリトルジャックオーケストラめ! と思って演奏者を見ると、みんな泣いてる!!
いや、でもこれは泣きますよね。FF9が大好きであればあるほどに。演奏者も観客もみんな泣いている中での「Melodies Of Life」。
「Melodies Of Life」が終わった後、そのまま途切れることなくメインテーマ「FINAL FANTASY」へと曲は続いていきます。 こういう時の、FINAL FANTASYという曲の包容力って凄いです。弦楽器だけで始まるおごそかな出だし。感動の物語が終わって、現実へと帰っていく道しるべとなるように。優しく、しかし勇壮に観客をエスコートしてくれました。
鳴り止まない拍手の中、アンコールとして白鳥英美子さんの「Message~虹~」が演奏されました。この曲は、白鳥英美子さんの「CROSS MY HEART」 というアルバムにだけ収録されている曲で、「FINAL FANTASY」に歌詞つけて
歌にしたもの。こんなレアな曲を生で聴ける機会が来ようとは!!
さらに、アンコールは続きFF1「グルグ火山、FF3「ドーガとウネの館」、FF7「ルーファウス歓迎式典」が演奏されました。どれもFF9に再登場する曲ですね。最後のルーファウスでは、みんなで手拍子!さながらウィーンフィルのニューイヤーコンサートのアンコール「ラデツキー行進曲」のようでしたw。泣いてぼろぼろになったけど、最後は明るく終わりました。
パンフレットも素晴らしかったです。年々クオリティが上がっていってますが、今年はついに金の箔押しの豪華な装丁!紙も心なしかいい紙になっています。
パンフレットの中身は1曲1曲が丁寧に解説されています。内容も非常にレベルが高く、中には物語を読み解く独自の考察まで!たとえば「奪われた瞳」の曲解説はこんなかんじ。
アレクサンドリアの「誘拐」の依頼ではガーネットがジタンの瞳を奪い、マダイン・サリの語らいではイプセンの言葉を引用するジタンがガーネットの瞳を奪い、「誘拐」の終わりを告げるこのシーンでは向かい合うことなく瞳の奥の感情を理解し合っている、曲名にも大きな意味がもたらされた重要な曲のひとつだと思うところです。
読んでて、なるほど!と思ってしまいました。
ということで、最高のコンサートでした!!いや、これはコンサートじゃないのかもしれないです…。プロのコンサートで、演奏者が泣いちゃうなんてことはありえないですよね。コンサートより、もっともっと特別な時間を過ごすことができました。
リトルジャックさんの演奏者のみなさんは、演奏しながら、心の中にはゲームのシーンが浮かんでいるに違いありません。ゲーム音楽というのは音楽単体で完結するものではなく、ゲームの映像につけられた音楽です。であるとすれば、そのゲームの映像を思い浮かべて鑑賞するのが、ひとつのあるべき楽しみ方だと思います。そうしたとき、演奏者がみなFF9を愛し、どんな場面で使われている曲なのか、その時のプレイヤーの感情はどうだったのかを自らが体験して理解しているリトルジャックさんの演奏はとても大きな力を持っていると感じました。
指揮者の志村さんは、1年間かけてこのコンサートのために準備をしてきたと語っていました。1年間かけてFF9の曲を極めていく。そんな贅沢な時間のかけ方はアマチュアにしかできないかもしれません。その1年間の重みと、何十時間もかけてゲームをプレイした体験の重み。それがあの涙となって表出したに違いありません。僕らは確かに、魂を揺さぶられました。
思い出の深くに刻み込まれた物語をみなで共有しながら、演奏者と観客で追体験を共有していく。コンサートを超えた、ゲーム音楽にしかできない、アマチュアにしかできない、ゲームを愛してやまない人たちにしかできない、エンターテイメントでした。リトルジャックオーケストラのみなさん、ありがとうございました!
次回のコンサートは2014年 2月 8日(土)で、曲は交響組曲「ドラゴンクエスト III そして伝説へ・・・」。非常に楽しみです!
【関連リンク】
過去:2012年のリトルジャックさん演奏会に行ってきたレポート
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レポートが熱いです。愛が伝わってきますね。今年はゲームショーも、たくさん出展されるってみんなも言ってるし、冬の時代は終わったのかもしれませんね!?
9は素晴らしかった