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【必読】元スクエニ社長、和田氏が明かす!任天堂と和解するまでの経緯

 2003年に発売された「ファイナルファンタジー・クリスタルクロニクル」は、スクウェアにとって任天堂との和解を象徴する記念碑的なタイトルなわけですが、元スクエニ社長の和田氏がスクウェアと任天堂がどうやって和解したのか経緯を振り返る文章を発表しました。当時の任天堂の社長との打ち合わせが生々しく描かれていたり、もの凄い内容です! 全文はこちらからどうぞ。

 前提となる業界知識を説明しておくと、ファイナルファンタジーの初代作品が1987年にファミコンで発売されてから1994年のFF6まで、スクウェアは任天堂ハードに作品を独占供給し続けていました。当然、世間はニンテンドー64にもスクウェアがソフトを出すと思っていたのですが、スクウェアは任天堂を裏切ってソニーのプレイステーションにFF7を独占供給します(1997年)。 そしてこれはプレイステーションの勝利に大きく貢献しました。 それ以来、スクウェアと任天堂は絶縁し、2003年のFFTAとFFCCまで一切タイトルを供給しなくなっていました。

 今回、和田さんが明かしてくれたのは、この絶縁状態からいかにして復縁したのか?というストーリーです。

原因は「利」ではない。取引事故でもない。発端はスクウェア側の配慮不足による感情の行き違い。未解決で放置されているのは、スクウェア側の外交の未熟さと、任天堂の「なぜお前から謝罪してこない」との面子と思われた。
任天堂の社長から担当を一任されている方との信頼を回復し、同じボートに乗って、双方の理になるような解決法を一緒に考え、実行することによって、山内社長を立てる。

なんだ、そんな事かと思われたかもしれない。
しかし、トップ通し=企業間の関係は、案外「そんなこと」でも動きますよ。理屈だけなら苦労はしない。

 ゲーム業界において伝説となっている人物、任天堂の山内博社長(当時)との打ち合わせの様子は、斬るか斬られるかの迫力が伝わってきて、必読です!

応接に現れた社長は、どこで売っているんだろうと思わせる上下紫のスーツ。銀髪が光り、ラスボス感が半端ではない。
眼光鋭く、甲高い早口で、「証券会社には何年いたのか」と質問してきた。
16年と答えると意外そうに「ほぉ、そんないたんか」と表情が緩んだ。
ビジネスマンとしての品定めだったのだと思う。

(中略)

それから別室で会食。
仕出しと持ち込みの日本酒(徳利ではなく、口の大きなカラフェ)。
山内社長はあまり口をつけず、もっぱらこちらに勧めた。
話の多くはスクウェア創業者の事。
「エロひげ(当時創業者は髭を生やしていた)は元気か」
「あいつはアパレルなんてやっているがうまくいくわけがない」
「エロひげがどんだけダメかと言えば、もぉ全然ダメやね!」

それは家出した息子に対する言葉だった。
そりゃ拗れていたわけだ。

ちなみに、ここに登場する「エロひげ」とは、スクウェアの創業者であった宮本雅史氏のこと。

 また、任天堂との復縁を模索する一方で、スクウェアはハリウッド映画の巨額損失を穴埋めするために、ソニーに149億円という巨額の出資してもらって切り抜けています。スクウェアは株式の18.6%をソニーに握られている状態。ピンチを救ってくれた『ソニーの顔に泥を塗るわけにはいかない。』と、ソニー側への情報開示の仕方にも非常に神経を使ったようです。

さらに、任天堂との取引再開を発表する際には、日経に事前にリークさせるなど、情報のコントロールの仕方まで語られています。

当時は2ちゃんねる全盛期でスクウェアは格好のネタ提供者。物凄い数のある事ない事、ない事ない事が瞬時に駆け巡る。
一発で終わらせなければ、ソニー、任天堂にご迷惑がかかる。

ここで貴重なアドバイスをいただいたのが、当時の社外取締役の方。
日経で速報性と権威を確保し、同じ週に東洋経済においてまとまった文章を掲載して憶測を封じ込める。
ただし、万一意図しないリークがあったらアウト。原稿が印刷にどのタイミングで回り、印刷所から配達までどのような段取りになっているかも教えてくれた。各々のタイミングにより、何曜日に日経にリークするかを相談の上決めた。

このほかにも、ソニー側の対応や、いかにして正規FFと任天堂向けFFの差別化を図るかなど、面白い話がてんこ盛りです!

感想

 ビジネスや外交というのは、ロジックではなく人と人の信頼が根底だよなというのがよくわかります。巨大企業同士の提携というと、完璧にロジカルに組まれていそうだと思ってしまいますが、実際にはそれだけではなくこのように「仁義を通す」ことが大事だし、ひとつの企業の中にもいろいろな考えの人がいて、たくさんの軸がある。自分の会社と相手の会社をどうやって動かしていくか?ビジネスパーソンとして勉強にもなりました!

 任天堂は当時「初心会」という卸売り業者の集まりを組織していて、卸売業者に「在庫」をすべて買い取ることを強制し、流通を押さえることが巨額の利益の源泉にもなっていました。スクウェアがPS参入とともに立ち上げた「デジキューブ」のコンビニ流通がそれをぶち壊すものであったことも山内氏の逆鱗に触れたというウワサもありました。この構図って、今のAppleに歯向かうEPICに通じるところがありますね。歴史は繰り返す…。

いやあ、これドラマ化したら面白そう。ソニーと任天堂が次世代機を共同開発していた話から、破断、そしてスクウェアの裏切りとPSの成功、FF映画の失敗、任天堂とスクウェアの復縁。スクエニ合併。このあたりの流れはそこらのドラマよりよっぽど激動です。

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コメント

  • コメント (3)

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    • 匿名
    • 2020年 8月 31日

    いやあ面白い。ゲームの話ではなく完全に会社経営、ビジネスの話ですね。
    Twitterではこれ発表して大丈夫なのかとナゾの心配がみられますが、内容を読めば、何も考えずこういう文章を発表するような人でないことはすぐわかります。

    〉〜〜案外「そんなこと」でも動きますよ。理屈だけなら苦労はしない。
    そう、ビジネスは理屈じゃないんです。人なんですよね。困ったことに。
    和田時代の作品は正直好きじゃないですが、大口取引先との関係を見事に修復したビジネスの腕前は確かなのでしょう。証券16年ってこういうことができる人のことなんだなと少し理解できた気がします。

    一番面白かったというか笑えたのは冒頭のここです。
    〉〜〜先方とは何も話していないし、開発準備もしていないとのこと。「向こうだってファイナルファンタジーは欲しいはずだから、これをきっかけに条件交渉できたりして」
    〉愕然とした。
    うーんこのFF病…。

    • 匿名
    • 2020年 8月 31日

    こんなドラマの果てに生まれたFFCCが手抜き(に見える)リマスターされちゃったのはほんと勿体ない。

    • 匿名
    • 2020年 8月 31日

    FFCCリメイクはがっかりだった…
    魔法ボタンも一個で付け替えしようとか駄リメイクにも程がある

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