FF7リメイクでファンから注目されていたのが「蜜蜂の館」です。原作では風俗店のような表現になっていて、2頭身キャラクターだからなんとかユーモアで通っていたものが、リアルなグラフィックになったらダメだろ!と。
しかし、リメイクではダンスショーすることで、規制にひっかからず、楽しくユーモラスで、ちょっとあやしい絶妙なバランスをとることに成功しています。そんなシーンはどのようにして生まれたのか? 原作でもリメイク版でも蜜蜂の館を手掛けた鳥山さんへのインタビューがスクエニ英語版サイトに掲載されましたので翻訳してご紹介します。
※日本語版のアニヤンは、英語版ではアンドレアに名前が変わっています。
――まず、クラウドがダンス対決をするというアイデアは、どのようにして生まれたのでしょうか?
鳥山:そもそものきっかけは、ゲーム中のクラウドの女装シーンをどうやって再現するかということでした。
FF7では非常に有名なシーンなので、リメイク版では最初から盛り込むことが決まっていました。しかし、クラウドがドレスを着ている姿をどう表現するかは決まっていませんでした。
ウォールマーケットのリメイクに着手した際、「もっと華やかにしたい」という思いから、ステージ上でのミュージカル・ナンバーで表現することを思いつきました。
――しかし、なぜダンスなのでしょうか?
鳥山:私はまず、クラウドがスポットライトを浴びて、舞台の観客の前に現れるというコンセプトを考えました。その場にふさわしいショーとして、パリのキャバレーやバーレスクの伝統的なダンスショーを参考にしました。
ショーの途中でダンス対決をすることも考えました。クラウドがドレスとメイクに着替えてステージに登場し、アンドレア・ローディアが彼の手を取り、2人で踊ってポーズをとるというものです。
――オリジナルのゲームとは全く異なるアプローチですね。なぜそのようにしたのですか?
鳥山:初代FF7の女装があまりにも有名だったので、リメイク版にも大きな期待が寄せられていることは認識していました。その期待に応えつつ、現代の感覚を取り入れた形にしなければならないと考えました。
例えば、最近のゲームファンは、ゲーム内のストーリーやセリフに、ステレオタイプな性別を超えたものを求めています。クラウドの女装シーンでは、アンドレアのセリフやミュージック「Stand Up」の歌詞を通して、クラウドを応援するようなポジティブなメッセージを込めるようにしました。
――そのメッセージを端的に伝える言葉を探すのは大変でしたか?
鳥山:実は、当初はもっと長い会話を予定していたのですが、ダンスシーンの台詞を短くまとめなければならなかったので、編集することになりました。
しかし、最終的には、より強く、よりストレートなメッセージを残すことができたと思います。
――技術的な配慮もあったのでしょうか?
鳥山:オリジナルでは、グラフィックがブロック状のポリゴンであったため、クラウドのメイクや髪型はある程度想像に任せることができました。しかし、現代のグラフィックでは、より詳細に表現する必要があります。
クラウドはクールでストイックなキャラクターなので、女装シーンのデザインは、コントラストの面白さと凛とした美しさを両立させることに時間をかけました。
――ダンス以外のアイデアも検討されたのでしょうか、それとも最初からこのようなシーンを想定していたのでしょうか。
鳥山:いえ、他にもいくつかの案がありました。原作に近い部分もありますが、アンドレアがクラウドと銭湯で出会うという案がありました。アンドレアは風呂場でクラウドと出会い、マッサージをしてもらってその筋肉に感動し、自分もイメチェンしたいと思うというものです。
しかし、マッサージのアイデアはマダムと重なるので、この案は断念しました。
他にもいくつかの案があり、メインステージとは別の部屋に組み込んだものもあります。
――では、実際に「蜜蜂の館」をどのように作っていったのでしょうか?
鳥山:まず、オープニング、3段階のダンスショー、そしてエンディングという全体の構成を決めました。それに合わせて、各パートの大まかな内容と時間を決めました。
その後、音楽の制作に入り、それが終わると映像の制作に入り、より具体的な内容を詰めていきました。そして最後に、振り付けの作業に入りました。振り付けチームには、私たちが求めているものの概要を伝え、そこからダンスショーの形が見えてきました。
このシーンは、最初のアイデアから、音楽を作り、モーションキャプチャーを取り、音楽とモーションを合わせるまで、長い時間がかかりました。最終的に完成するまで、とても神経を使いました。
――音楽は最初から決まっていたのでしょうか、それとも途中で変わったのでしょうか?
鳥山:このようなシーンでは、音楽が決まっていないと細かい部分が見えてこないので、まず音楽を決めました。その後、シーンやタイミングに合わせて音楽を作り直していくという流れです。
最初は大まかな曲のアウトラインを決めて、そこから徐々に作り上げていきました。ダンスショーのイメージをつかむために、作曲者の鈴木光人さんと一緒に六本木のクラブに行ったことを覚えていますよ。
――実際に誰が踊っているのですか?モーションキャプチャーはプロに依頼したのですか?
鳥山:このシーンでは、バーレスクのショーや振り付けを手がけるプロのダンサーたちに依頼しました。彼らは、ダンスショーのセクションごとに、コンセプトや振り付けを変えることを提案してくれました。
このシーンを作るにあたっては、実際に何度もレコーディングと修正を繰り返しました。
例えば、当初はポールダンスのシーンが含まれていたので、凝ったセットで撮影が始まりました。レーティングへの影響を考えて、その部分は削除しました。
――この部分をリズムアクションゲームにもしようと思ったのはなぜですか?
鳥山:「FINAL FANTASY VII REMAKE」や「INTERGRADE」のミニゲームは、限られた時間の中で特定の課題をクリアしていくものなので、さまざまなジャンルのゲームジャンルからインスピレーションを得てデザインしました。
また、リズムアクションはダンスの代表的な表現方法なので、入力はシンプルでわかりやすく、シーンのビジュアルに合わせたユーザーインターフェースを採用しました。
――これらの要素を両立させるのは難しかったですか?
鳥山:確かに難しかったですね。リズムアクションのタイミングをUIで表現するために、光の演出で飛んでくるようにしました。これによってシーンに奥行きが出るのですが、ダンスシーンではカメラの角度が大きく変わるので、すべてを明確に見せるのは難しかったですね。
――ゲームをプレイした人たちは、「蜜蜂の館」をとても気に入ってくれたようです。その反応を見て、どう感じましたか?
鳥山:このシーンは、オリジナルのFF7から大幅に変更された重要なポイントです。原作ファンの方がどう思われるか心配していましたが、予想以上の反響をいただき、ほっとしています。
今後、リメイク版ではオリジナルと大きく異なる部分も出てくると思います。その際の参考になればと思っています。
――最後に、多くのファンを代表して言わせていただきますが、この部分を完全なリズムアクションゲームにすることは考えていませんか?
鳥山:(笑)曲を増やして、ティファやエアリスのように、もっとたくさんのキャラクターが踊るようになったら楽しいかもしれませんね。レッドXIIIも喜んで踊ってくれると思いますよ。
でも、今はまだリズムゲームにするつもりはありません(笑)。