海外メディアのGameInformerがキングダムハーツ4について野村哲也氏に独占インタビューを実施していますので、その日本語訳をお届けします。
In our exclusive interview with Kingdom Hearts director Tetsuya Nomura, we learn more about Kingdom Hearts IV, the future of Final Fantasy characters, and why he was hesitant to put Sora in Super Smash Bros. Ultimate: https://t.co/KwfGd4WlOR pic.twitter.com/9W8oXv152V
— Game Informer (@gameinformer) June 14, 2022
先日、シリーズが20周年を迎えましたが、どう感じていますか?また、キングダムハーツのレガシーはどうなると思いますか?
野村: 20年というのはとても長いようで、そうでもないような気がします。長い歴史の中で、アメリカのディズニーのオフィスを訪ねたり、打ち合わせをしたりしたことは、なんとなく覚えています。でも、実際にゲームを作っているときの記憶となると、ちょっと曖昧なんです。シリーズがまだ続いていて、しかもリアルタイムなので、何もかもが思い出になったという感じではありません。シリーズは常に進化していますし、物語も続いています。レガシーについては、「キングダム ハーツ」のストーリーの中心的なテーマである「ハート」でしょう。今後もそれを描き、さまざまな形でハートの物語を伝えていきます。
このシリーズはクリフハンガーなラスト(物語が宙づりのまま終わり先が気になる)が特徴です。どのように「クリフハンガー」でありながら、プレイヤーに「いくつかの答えがある」と思わせるのですか?
野村: どのタイトルも、ゲームとして完結しているものを目指しています。どのゲームも同じように、ある意味、エンディングがあります。しかし、「キングダム ハーツ」のストーリーは謎が多く、現在も続いているため、さまざまなことに挑戦することができるのです。ファンは、何かがわかったと思うたびに、今度は新たな謎が生まれると言います。
ゲームの中で完結するようにしつつ、次のタイトルや次のストーリーで何が重要なのかをファンに知ってもらうために、新たな謎を用意しているのでしょう。個人的には、このアプローチは特別なことではなく、すべてのゲーム開発者がゲームを作るときに考慮すべきことだと感じています。
ファンの反応が良かったクリフハンガーは何ですか?
野村: まず思い浮かぶのは、初代『キングダム ハーツ』のエンディングです。初代『キングダム ハーツ』をプレイした人は、まさかこの先も物語が続くとは思っていなかったでしょうから、プレイヤーにとっては予想外の出来事だったのではないでしょうか。また、『キングダム ハーツIII』では、最後の最後でルシュがフードを脱ぐシーンがありますが、あれは自分が望んでいたことだったので、ファンの方々の反応を見るのがとても楽しかったです。
「バース バイ スリープ」や「キングダム ハーツ 358/2 Days」などのゲームに登場するキャラクターが、これほどまでに人気を博すとは思っていましたか?また、「キングダム ハーツ IV」では、これらのキャラクターが登場するのでしょうか?
野村: ソラやリクのようなキャラクターをもっと見たいのだろうとは思っていましたが、この2つのタイトルに登場したキャラクターがこれほどまでに支持されるのは予想外でした。「キングダム ハーツ IV」で彼らの物語を描くかどうかですが……「キングダム ハーツ IV」の物語は、ソラの失踪に焦点が当てられています。他のキャラクターのストーリーを描く余地があるかどうかはわかりませんが、これらのキャラクターがとても人気があり、人々がもっと見たいと思っていることは私もチームも承知しています。ですから、もし可能であれば、もっと多くのキャラクターを登場させたり、今後の機会で彼らの物語を共有し続けることができれば、とても素晴らしいと思います。
「キングダム ハーツ」の人気が急上昇したもうひとつのポイントは、「大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL」にソラが登場したことです。ソラが参戦することへの想いをお聞かせください。
野村: もちろん、『スマブラSpecial』にソラを登場させることができたのはとてもうれしいです。ソラが発表されたときのみなさんの反応は、「ディズニーが彼の出演をOKしたなんて信じられない!」というものがほとんどでした。私は実際、スマッシュブラザーズでの彼の登場について非常にうるさい人でしたが、ディズニーは、『どうぞ!』という感じでした。『これは素晴らしいチャンスだ』と。キングダム ハーツやディズニーの世界観とぶつかる可能性もあり、実現は難しいと思っていたので、慎重に検討しなければなりませんでした。実際にソラをスマブラに迎えて、みなさんが喜んでいるのを見ると、結果的に本当に良かったなと思っています。
ゼアノートというのは印象的な悪役で、これからロストマスター編に突入します。その後に続く、新たな敵との対立をどのように作っていくのでしょうか。
野村: おっしゃるとおり、ゼアノートは本当に印象的なキャラクターです。この敵の存在は、シリーズを通して時間をかけて肉付けしていきました。初代『キングダム ハーツ』ではアンセム、『キングダム ハーツII』ではゼムナスと、基本的に1人の人物から派生した2つの人物に始まりました。1作目では心臓の部分のみを、2作目では肉体の部分を探りました。その結果、キャラクターを完全に具現化することができました。このように、じっくりとキャラクターを育てていく手法がとても気に入っています。敵キャラの存在感は、本当に良いキャラになるためにとても重要だと感じています。物語に深みと密度を与えてくれる。それをやり遂げたという感じです。
そして、次のサーガへと進んでいきます。「キングダム ハーツ IV」の予告編で、「ロストマスター編」について触れました。物語の続きのために、新たな敵の姿を掘り下げていきます。この新たな敵は、『キングダム ハーツIII』のラストに登場する仮面のキャラクターと関係があり、ソラの前に立ちはだかる障害物になりそうです。また、『キングダム ハーツ 2.8』では、どんなキャラクターなのかを紹介しましたので、すでにシリーズ内で登場している敵でもあります。もちろん、新キャラクターも登場しますが、まだ詳しくは言えません。
ソラが主人公であることの重要性、あるいはソラ以外のキャラクターを登場させることは考えていますか?
野村: スピンオフ作品ではソラ以外の主人公も登場しますが、本編ではソラしか主人公の候補がいないと思っています。もしソラが主人公でなくなったら、それはナンバリングタイトルの終わりを意味するような気もします。それくらい重要なキャラクターです。
キングダムハーツIVではドナルドとグーフィーが登場しましたが、多くのファンが抱いている疑問は、ディズニーがどれだけシリーズに欠かせない存在になるのか?ということです。
野村: 「キングダム ハーツ IV」に関して、プレイヤーは間違いなくいくつかのディズニーワールドを目にすることになるでしょう。ただ、この点については、それほど心配する必要はないと言っておきたいと思います。今までの「キングダム ハーツ」とは少し違うかもしれませんが、プレイしていただければ、「キングダム ハーツ」であることは間違いないと思います。やはり「キングダム ハーツ」シリーズなのです。
グラフィックのクオリティについては……新作を出すたびにスペックが上がり、グラフィック面でできることが増えているため、ある意味、作れる世界が限られてしまうんです。現時点ではどこまでできるか検討中ですが、『キングダム ハーツ IV』でもディズニーの世界は登場します。
「キングダム ハーツ IV」のアイデアや企画はいつごろから着手していたのですか?
野村: あるタイトルを作っているときは、すでに次のタイトルで何を取り入れたいかを考えています。例えば『キングダム ハーツ IV』では、『キングダム ハーツ III』を作っているときに、すでに「こういうことをやりたい」と考え始めていました。これは、キャラクターや世界観、あるいはゲームシステムとして取り入れたいものという意味合いが強いです。毎回同じようなプロセスで、次のタイトルでは何を改善するか、何を変えるかを常に考えています。
例えば『キングダム ハーツII』では、リアクションコマンドというシステムを導入しました。しかし、ファンからの評判は芳しくなく、あまり人気がなかったように感じます。そこで『キングダム ハーツIII』ではそのシステムを削除したのですが、「なぜ削除したんだ」とファンの方から言われました。そこで、『キングダム ハーツ IV』で復活させることを検討しています。課題は、アクションゲームにあります。足元がしっかりしていないと、満足のいくアクションを繰り出すのは難しいです。これは『キングダム ハーツ IV』でゲームプレイの1つの側面として実現できればと思い、取り組んでいるところです。
クァッドラトゥムでは多くの時間を過ごすことになるのでしょうか?より現実的な設定にすることで、ゲームプレイで新しいことに挑戦する機会が増えるのでしょうか?
野村: ゲーム内の初期拠点として設定されているので、かなりの時間を費やすことになると思います。そこで過ごして、違う世界に行って、またそこに戻ってくる。今回はグラフィックがよりリアルになった分、ソラの日常生活面もよりリアルになった気がします。自分の部屋に出入りして、そこで過ごしている姿が見える。また、「ソラ」の日常生活もよりリアルになっています。
世界観については、これまでディズニーの世界を多く取り上げてきましたが、その中で最もリアルだったのは『パイレーツ・オブ・カリビアン』でしょうか。今回は、現実の世界で時間を過ごす。これは、どれだけリアルにできるかという自分たちへの挑戦であり、今まさに取り組んでいるところです。今はまだ、それ以上のことは言えません。
新しい作品にファイナルファンタジーのキャラクターが登場しないことについて、ファンの皆さんはとても心配しています。それとも「キングダム ハーツ IV」はカメオ出演を増やすチャンスなのでしょうか?
野村: 『キングダム ハーツIII』ではファイナルファンタジーのキャラクターがそれほど多くなかったと思います。ひとつクリアにしておきたいのは、多くのファンが「キングダム ハーツ」はディズニーキャラクターとファイナルファンタジーのキャラクターがコラボした作品だと言っていることです。しかし、それは「キングダム ハーツ」の基本的なコンセプトではなく、「キングダム ハーツ」とはまったく別のものだと私は思っています。
1作目をリリースしたとき、「キングダム ハーツ」のオリジナルキャラクターは数人しかいませんでした。ディズニーの有名なキャラクターが登場すると、誰も新キャラクターのことを知らないので、まだ立ち位置が難しいと感じていました。そこで、「ファイナルファンタジー」のキャラクターをたくさん登場させ、「キングダム ハーツ」のオリジナルキャラクターをもっと知ってもらえるよう、手を貸しました。
今、『キングダム ハーツ』にはたくさんのオリジナルキャラクターがいて、とても愛されていますし、そのキャラクターをもっと見たいという声もあります。『キングダム ハーツIII』では、『キングダム ハーツ』のオリジナルキャラクターが多かったので、『ファイナルファンタジー』のキャラクターを入れる余地がなかなかありませんでした。その辺のバランスを考えています。ファンの中には、ファイナルファンタジーのキャラクターをもっと出してほしいという声もあったと思います。それは間違いなく私たちが考えていることです。しかし、オリジナルキャラクターの数が非常に多いので、『キングダム ハーツ IV』でどのようなバランスになるのか、どのように展開されるのかはわかりません。まだはっきりとしたことは言えません。
最後に、ファンへのメッセージをお願いします。
野村: 『キングダム ハーツ IV」に関しては、残念ながらしばらくは新しい情報をお伝えすることができません。でも、今日のインタビューを読んでもらえれば、新しい情報や詳細が少し明らかになると思います。そのあたりを考慮して、新しい情報を見つけてもらえたらうれしいです。
また、「キングダム ハーツ Missing-Link」についても触れたいと思います。年内のクローズドβ開始に向けて動いています。スマートフォンのゲームにあまり興味がない方もいらっしゃると思うので、あまり期待されていないかもしれませんが、誰でもすぐに遊べるような作品にしています。これまでのモバイル作品と比較すると、よりシリーズに近く、『キングダム ハーツ IV』ともつながる部分が多いですね。
『キングダム ハーツ IV』の新情報やヒントを得るには、まず『Missing-Link』をプレイしていただくのが一番わかりやすいと思います。また、『キングダム ハーツ IV』とは特に関係なく、あくまでシリーズを通しての謎も出てきます。また、Missing-Linkに登場するいくつかのフィギュアは、キングダム ハーツ IVと関連しています。今言えるのはそれだけです。